漢字「瞬き」の読み方と使い分けの解説イメージ
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「まばたき」と「またたき」、日常生活や文章作成でどっちを使えばいいのか迷うことってありますよね。漢字で書くとどちらも「瞬き」ですが、読み方によってニュアンスが変わるのか、それとも明確なルールがあるのか気になるところです。実は「瞬く間に」という言葉の読み方や「星のまたたき」の意味、さらには専門的な「瞬目」の読み方まで含めると、意外と奥が深いんです。この記事では、そんな言葉のモヤモヤをスッキリ解消していきましょう。

記事のポイント

・日常会話と文章表現での正しい使い分け
・「瞬く間」など定型表現の読み方ルール
・医学や天文学における専門的な定義の違い
・星や光の描写に適した表現の選び方

まばたきとまたたきどっち?正解と使い分け

まずは基本中の基本、言葉の意味とルールの部分から整理していきましょう。「どっちでもいいじゃん」と思われがちですが、実は現代日本語においては、明確な「使い分けの傾向」が存在します。ここを押さえておくだけで、迷う回数は激減するはずですよ。

意味と違いから見る基本的な使い分け

辞書を引いてみると、「まばたき」も「またたき」も、多くの場合は同じ漢字「瞬き」が当てられ、意味も重なっている部分があります。しかし、厳密に言葉の成り立ちや中心となる意味合いを見ていくと、そこには決定的な「守備範囲のズレ」があることに気づきます。

まず「まばたき」ですが、これはもう圧倒的に「身体動作」に重きが置かれています。「目蓋(まぶた)」という言葉があるように、「ま」は「目」を指す古い言葉の要素です。つまり、物理的にまぶたをパチパチさせる動作そのものを指す場合、第一選択肢は間違いなく「まばたき」になります。

一方で「またたき」はどうでしょうか。こちらも身体動作の意味を含んではいますが、それ以上に「光の明滅現象」という意味合いが強く加わります。「灯火(ともしび)がまたたく」といった表現に代表されるように、視覚的な「光の揺らぎ」を表現する言葉として発展してきました。

これを整理すると、以下のようになります。

  • まばたき(瞬き):主に「まぶたを閉じて、またすぐに開くこと」という身体動作・生理現象を指すのがメイン。
  • またたき(瞬き):まばたき(身体動作)の意味も辞書には載っているが、現代では「光がちらちら明滅すること」という物理現象・視覚効果の意味で使われることが多い。

つまり、「ドライアイで目が乾くからパチパチする」のは身体的なことなので「まばたき」。「遠くの信号がチカチカしている」のは光の現象なので「またたき」。このように、対象が「肉体」なのか「光」なのかで判断すると、まず間違いありません。

漢字「瞬き」の読み方は文脈で決まる

日本語の難しいところであり、面白いところでもあるのが、同じ漢字でも文脈によって読み方がガラリと変わることですよね。「瞬き」という漢字が文章中に出てきたとき、どう読むのが正解なのでしょうか。これは「前後の文脈」が最大の判断材料になります。

例えば、あなたが小説を読んでいるとして、「彼女は驚いて大きく瞬きをした」という一文があったとしましょう。このシーン、彼女の目(まぶた)が動いている描写ですよね。この場合、読み手としては「まばたき」と脳内変換するのが自然ですし、朗読する場合もそう読むのが一般的です。ここに「光」の要素はありませんから。

逆に、「冬の夜空に星の瞬きが冴え渡る」という文章ならどうでしょう。これは星の光がキラキラしている様子を描写しているので、「またたき」と読むのが正解です。もしこれを「星のまばたき」と読んでしまうと、なんだかお星様に目玉がついていて、パチパチとまぶたを動かしているような、少しコミカルで擬人化されたイメージになってしまいます(もちろん、そういう意図の詩ならOKですが!)。

迷ったときの判断基準

判断に迷ったら、以下の質問を自分に投げかけてみてください。

  • その「瞬き」は、筋肉やまぶたを使った動きですか? → YESなら「まばたき」
  • その「瞬き」は、光の点滅や輝きの揺らぎですか? → YESなら「またたき」

この基準を持っておけば、ビジネスメールで「瞬き」という言葉を使うことはあまりないかもしれませんが、エッセイやブログを書くとき、あるいはスピーチ原稿を作るときに、自信を持ってふりがなを振ることができるはずですよ。

「瞬く間」の正しい読み方はこれだ

ここで一つ、非常に強力なルール、いわゆる「定型表現(イディオム)」の話をしましょう。「瞬く間」という言葉がありますよね。「ほんの短い時間」を意味するこの言葉、皆さんはどう読んでいますか?

正解は、ズバリ「またたくま」です。

辞書を引いてみると、見出し語として「またたくま」で立項されており、これが現代日本語における「鉄板」の読み方となっています。「まばたきするほどの一瞬の間」という意味から来ているのですが、慣用句としてセットになったときは「またたく」という読み方が固定化されているんですね。

これは、「雨(あめ)」と「雲(くも)」がセットになると「雨雲(あまぐも)」と読みが変わる現象や、特定の熟語で読み方が決まる現象に近い感覚で捉えてもいいかもしれません。「瞬く間に過ぎ去った」「瞬く間に売り切れた」など、スピード感を強調したいときに非常によく使われる表現ですが、これを「まばたくまに」と読んでしまうと、聞き手に「ん?」という違和感を与えてしまいます。

覚えておきたい定型句

  • 瞬く間に(またたくまに):あっという間に。
  • 瞬く(またたく):(星などが)光る、または短時間が経過する。

「一瞬」という言葉があるように、「またたく」という響きには、時間の短さや儚(はかな)さを表現するニュアンスが含まれています。日常会話でも「またたく間に時間が過ぎちゃったね」なんてサラッと言えると、語彙力が高い印象を与えられますよ。

「まばたく間」は誤用?定型句の注意点

では、意地悪な質問かもしれませんが、「まばたくま」と読むのは完全に間違い(誤用)なのでしょうか?

言語学的な視点で見れば、文法的に「まばたく(動詞)」+「間(名詞)」が組み合わさっているだけなので、決して日本語として成立しないわけではありません。「私がまばたきをする間(あいだ)」という意味で「まばたくま」と言うことは、論理的には可能です。

しかし、言葉というのは「みんながどう使っているか」という社会的な合意形成が重要です。現状、慣用句として圧倒的に定着しているのは「またたくま」の方であり、「まばたくま」という表現は、耳慣れない言葉として処理されてしまいます。

ここが落とし穴!

特にビジネスシーンや公的な場でのスピーチでは注意が必要です。もしあなたがプレゼンで「弊社の商品は、発売からまばたくまに完売しました」と言ってしまったらどうなるでしょう。

聴衆の中には「あれ、この人、慣用句の読み方を知らないのかな?」「教養がないのかな?」とネガティブな印象を持つ人がいるかもしれません。言葉の正しさ云々よりも、「相手に違和感を与えない」というコミュニケーションのマナーとして、ここは無難に「またたくま」を選んでおくのが賢明です。

もちろん、あえて詩的な表現として「君がまばたく間に、世界は変わった」のように、具体的な「まぶたの動き」を強調したい場合は別です。でも、単に「短い時間」を表したいだけなら、迷わず「またたくま」を使ってくださいね。

医学用語「瞬目」と日常語の境界線

少し視点を変えて、専門的な領域での呼び方についても深掘りしてみましょう。眼科に行くと、カルテや専門書には「まばたき」とは書かれていないことが多いんです。では何と書かれているのか?

正解は「瞬目(しゅんもく)」です。

医学、生理学、人間工学などの学術分野では、「まばたき」のことを正式に「瞬目」と呼びます。「まばたき」や「またたき」だと、どうしても日常語としての曖昧さや、文学的なニュアンスが残ってしまうため、科学的な定義をするために漢語で統一されているんですね。

例えば、まばたきには大きく分けて3つの種類があると言われています。

種類 説明 具体例
自発性瞬目 無意識に定期的に行うもの 普段パチパチしているあれ
反射性瞬目 外的刺激で反射的に行うもの 目にゴミが入ったときなど
随意性瞬目 意識的に行うもの ウインクや合図など

このように、医学的には「瞬目」という言葉を使って、現象を細かく分類・分析しています。ただし、これをお医者さんが患者さんへの説明で使うかというと、話は別です。

診察室で先生が「はい、そこで随意性瞬目をしてください」なんて言ったら、患者さんはポカーンとしてしまいますよね(笑)。そこは「パチパチしてください」「強くまばたきしてください」と、日常語の「まばたき」が使われます。「専門用語(瞬目)」と「日常語(まばたき)」を、相手に合わせて使い分ける。これもまた、言葉のプロフェッショナルな姿と言えるでしょう。

ちなみに、まばたきの回数が極端に増えたり減ったりする場合は、眼瞼けいれんやドライアイなどの病気が隠れていることもあります。

(出典:日本眼科医会『目についての健康情報』

まばたきとまたたきどっちを選ぶ?文脈による正解

ここまで、辞書的な意味や専門用語について見てきました。ここからは、私たちが実際にブログを書いたり、手紙を書いたり、あるいは日常会話をしたりするシーンで、どちらを選ぶべきかという「実践編」に入っていきましょう。

星の描写は「またたき」が自然な理由

夜空を見上げたとき、星がチカチカと光っている様子。これを言葉にするとき、あなたは「星のまばたき」と言いますか?それとも「星のまたたき」と言いますか?

結論から言うと、美しい日本語として推奨されるのは圧倒的に「星のまたたき」です。

先ほども少し触れましたが、「またたき」には辞書レベルで「光の明滅」という意味が含まれています。古くから、日本の文学や歌詞において、星や遠くの灯台、蝋燭(ろうそく)の炎など、不規則に揺らぐ光の表現には「またたく」という動詞が選ばれてきました。

「星がまばたきしている」と言っても通じなくはないですが、やはり「まばたき=目」というイメージが強いため、星がパチクリと目を動かしているような、少し子供っぽい表現に聞こえてしまうことがあります。

ワンポイントアドバイス

文章を書くとき、ロマンチックな雰囲気や静寂さを出したいなら「またたき」を選びましょう。「街の灯りがまたたき始めた」と書くだけで、夕暮れ時の切ない空気感や、遠くの街の広がりまで伝わってきませんか?言葉の選び方ひとつで、読者の脳内に浮かぶ映像の解像度は格段に上がるんです。

星がチカチカする物理的な仕組み

ちょっと脱線しますが、そもそも「なぜ星はまたたくのか」を知っていますか?これを理解すると、「またたき=光の現象」というイメージがより強固になりますよ。

天文学や物理学の世界では、星がチカチカと明滅して見える現象を「シンチレーション(scintillation)」と呼びます。これは、星そのものが点滅しているわけではありません。

宇宙空間から地球に届いた星の光は、私たちの目に届くまでに厚い「大気の層」を通過します。地球の大気は、温度差や風の流れによって常に動いており、密度が均一ではありません。この「空気の揺らぎ」の中を光が通るとき、光が屈折(曲げられること)を起こします。この屈折の度合いが刻一刻と変化するため、地上にいる私たちには光が強くなったり弱くなったり、あるいは色がチラチラ変わったりして見えるのです。

惑星はあまり「またたかない」?

面白いことに、火星や木星などの「惑星」は、恒星(自ら光る星)に比べてあまりまたたきません。これは、恒星が地球から遠すぎて「点」にしか見えないのに対し、惑星は比較的近いため、望遠鏡で見ると分かるように小さな「面(円盤)」としての大きさを持っているからです。

面で光が届くため、大気の揺らぎによる影響が互いに打ち消し合って(平均化されて)、光が安定して見えるんですね。

「星のまたたき」という言葉の裏には、こうした壮大な宇宙と地球の大気のドラマが隠されているんです。そう思うと、「またたき」という言葉がより神秘的に感じられませんか?

語源から紐解く「バ」と「タ」の差

ここからは少し感覚的な、言葉の「音」に関するお話をしましょう。「まばたき」と「またたき」。たった一文字、「バ」か「タ」かの違いですが、私たちが受ける印象はずいぶん違います。

日本語のオノマトペ(擬音語・擬態語)や音象徴(おんしょうちょう)の観点から考えると、この違いは非常に興味深いんです。

音の響きが持つイメージ

  • まばたき(バ):濁音「バ」という濁音が入ることで、重厚感や物理的な接触、あるいは「バチッ」と閉じるような力強い動作を感じさせます。肉体的で、実在感のある響きです。
  • またたき(タ):清音すべて濁点のない清音で構成されています。「タタタ」という軽やかなリズムや、触れられないもの、儚(はかな)いもの、あるいは鋭くきらめく光のようなイメージを持ちやすいです。

これはあくまで仮説や解釈の域を出ませんが、私たちが無意識に「自分の目はまばたき(肉体的な動作)」「綺麗な星はまたたき(触れられない光)」と使い分けている背景には、こうした音の響き(語感)が無意識レベルで影響している可能性があります。

「まばゆい」と「またたく」。どちらも「目」や「光」に関わる言葉ですが、日本語のDNAの中に、濁音と清音によるイメージの仕分けが組み込まれているのかもしれませんね。

歌詞や文学における表現の豊かさ

さて、ここまで「基本ルール」や「推奨される使い分け」を説明してきましたが、クリエイティブな世界(文学、歌詞、キャッチコピーなど)では、これらのルールがあえて破られることもあります。

例えば、明治の文豪・夏目漱石の作品『文鳥』の中に、「瞬」という漢字に「まばたき」とルビ(ふりがな)を振っている箇所があります。文脈としては目の動きを表しているのですが、あえて漢字の「瞬」を使うことで、時間の短さや心理的な機微を表現しようとしたのかもしれません。

また、現代のJ-POPの歌詞を分析してみると面白い傾向が見えてきます。人の目の動きであっても、それが単なる生理現象ではなく、「恋の予感」や「別れの予感」、あるいは「命の輝き」のような抽象的なイメージと結びつくとき、作詞家はあえて「またたき」という言葉を選ぶことがあります。

「君の瞳がまたたいた」――こう表現すると、単に目をパチパチしただけでなく、その瞳の中に星のような輝きがあったり、一瞬で消えてしまいそうな儚さがあったりするような気がしませんか?

表現の世界では、「事実を写実的に伝えたいならまばたき」「情緒やイメージを優先したいならまたたき」という使い分けも、高度なテクニックとして存在しているのです。

まばたきとまたたきどっちを使うべきかの結論

いろいろと深掘りしてお話ししてきましたが、情報量が多すぎて「結局どっちを使えばいいの?」となってしまったかもしれませんね(笑)。

最後に、迷ったときにすぐ使える「決定版の使い分けルール」を表にまとめました。これさえ覚えておけば、もう二度と迷うことはありません。

シーン・対象 推奨される読み方 選択の理由・ポイント
人の目・身体動作 まばたき 辞書の第一義であり、日常会話で最も自然。まぶたの動きを指すならこれ一択。
星・光・灯火 またたき 光の明滅を意味する。情景描写として美しく、誤解を招かない。
短い時間(瞬く間) またた(く間) 「またたくま」が定型慣用句として社会的に定着している。「まばたくま」は避けるのが無難。
医療・学術 瞬目(しゅんもく) 専門用語として定義が確立されている。論文やレポートではこれを使う。

基本の合言葉は、「目はまばたき、光と時間はまたたき」です。

言葉は生き物であり、時代とともに変化するものですが、現時点での「最適解」を知っておくことは、あなたの言葉への信頼度を高めてくれます。この使い分けをマスターして、ぜひ自信を持って会話や文章作成を楽しんでくださいね。