「応募いたしました」と「応募させていただきました」の印象の違いを比較したイメージ画
どっち道ライフ・イメージ

就職活動や転職活動を進めていると、ふとした言葉遣いで「あれ、これで合ってるかな?」と手が止まってしまうことってありますよね。特に企業へのファーストコンタクトとなる応募メールや、履歴書を送る際の添え状(カバーレター)では、「応募いたしました」と書くべきか、それとも「応募させていただきました」と書くべきか、どちらが正解なのか悩みどころです。

「丁寧すぎると変に思われないかな?」「逆にシンプルすぎると、熱意がないと思われない?」なんて考え出すと、送信ボタンを押すのが怖くなってしまいますよね。実はこの悩み、あなただけではありません。多くの求職者がこの「距離感」に頭を悩ませています。

この記事では、そんな言葉の選び方に関する疑問を、採用担当者の心理やビジネス敬語のルールに基づいてスッキリ解消します。マナー本を読み漁る必要はありません。ここで「自信を持って送れる正解」を手に入れてくださいね。

記事のポイント

・一般的な応募シーンで「どちらが無難か」の最終結論
・状況によって使い分けるべき敬語の具体的な基準と理由
・採用担当者に「おっ、仕事ができそう」と思わせるメール作成術
・そのままコピペして使える、場面別の実践的テンプレート

応募いたしましたと応募させていただきましたの使い分け

まずは結論から言ってしまうと、文法的に言えばこの二つの表現、実はどちらも間違いではありません。しかし、ビジネスの現場や採用担当者の心理を深掘りすると、「こちらのほうが無難で好印象」という明確な傾向が存在します。ここでは、言葉の構造や受け取られ方の違いから、最適な使い分けの基準を詳しく解説していきますね。

正しい敬語を選ぶための判断基準

求人サイト(リクナビやマイナビ、Greenなど)や企業の採用ページを見て、自分からエントリーする場合、基本的には「応募いたしました」を使うのがベストかつ最強の選択肢です。

なぜ「応募いたしました」が推奨されるのでしょうか? それは、「応募」という行為の性質に理由があります。応募というのは、あくまであなたの「意思」で行う自発的なアクションですよね。誰かに強制されたわけでもなく、許可がないとできないことでもありません(公募ですから)。

「いたしました」は「する」の丁寧な謙譲語(へりくだった表現)です。つまり、「(私が自発的に)応募した」という事実を、相手を敬いつつシンプルに伝えるには、この形が最も論理的で美しいんです。

ここがポイント

「応募いたしました」は、余計な装飾がなく事実を伝えているため、読み手に「要点をまとめる力がある」「論理的である」という印象を与えやすい表現です。迷ったらこちらを選べば、まず間違いありません。

一方で、「応募させていただきました」はどうでしょうか。この「させていただく」という言葉、実は文化庁の指針でも「許可を受けて行う場合」や「恩恵を受ける場合」に使われるのが基本とされています。

通常の公募では、企業側がいちいちあなた個人に「応募していいですよ」と許可を出しているわけではありませんよね。そのため、文脈として「許可を得て、応募させてもらった」という形にすると、少し論理的な違和感が生じたり、あるいは「恩着せがましい」「慇懃無礼(丁寧すぎて逆に失礼)」と受け取られたりするリスクがわずかながら残るんです。

もちろん、最近では「させていただく」が「いたす」の代わりとして広く使われているため、即座にNGになるわけではありません。ですが、リスクを最小限に抑えるなら「応募いたしました」に軍配が上がります。

(出典:文化庁文化審議会答申『敬語の指針』

適切な表現への言い換えテクニック

「とにかく丁寧に書かなきゃ!」と気負うあまり、敬語を使おうと頑張りすぎて、かえって不自然な日本語になってしまうこと、ありますよね。いわゆる「バイト敬語」や「二重敬語」、「過剰敬語」と呼ばれるものです。これらをスッキリと言い換えるだけで、あなたの文章の知性はグッと上がります。

よくある間違いの代表格が、「貴社の求人にご応募させていただきました」という表現です。これを分解してみましょう。

  • 「ご」:丁寧語
  • 「応募」:名詞
  • 「させて」:使役
  • 「いただく」:謙譲語

このように敬語が渋滞を起こしています。さらに言えば、自分の行為(応募)に「ご」を付けるのは、厳密には間違いではありませんが(「ご連絡」などはOKなので)、文脈によっては「自分の行為を高めている」と誤解されることもあります。読み手によっては「回りくどい」「自信がなさそう」「敬語を知らないのかな?」と感じる原因になりかねません。

避けたほうがよい表現(過剰・冗長) 推奨されるスマートな言い換え 解説
ご応募させていただきました 応募いたしました シンプル・イズ・ベスト。「ご」も「させて」も不要です。
拝見させていただきました 拝見いたしました 「拝見」という言葉自体に「見る」の謙譲語が含まれているので、さらに「させていただく」を重ねる必要はありません。
担当させていただいておりました 担当しておりました 職務経歴書などでよく見かけますが、事実を述べるだけなら「しておりました」で十分丁寧です。

こうして見ると、「させていただく」を「いたす(いたしました)」に言い換えるだけで、文章が驚くほどスッキリしますよね。相手の時間を奪わない、読みやすいメールを作ることも、立派なビジネススキルの一つですよ。

志望動機を伝えるメールの表現

志望動機をメール本文に書く際や、履歴書の送付メール(カバーレター)を送る際も、言葉選びは非常に重要です。ここで熱意を伝えたいあまり、文末がすべて「〜させていただきたいです」になってしまう方がいますが、ここもメリハリが大切です。

例えば、「貴社に入社して、〇〇の分野で貢献させていただきたく存じます」という表現。これは未来の話であり、相手(企業)に受け入れてもらうことが前提なので、「させていただく」を使っても違和感はありませんし、むしろ自然です。

しかし、過去の事実である「応募したきっかけ」に関しては、やはりシンプルさが好まれます。

「貴社のビジョンに深く共感し、ぜひ挑戦させていただきたく、応募させていただきました」

これだと「させていただく」が連続していて、なんだか読んでいて息苦しいですよね。

おすすめのフロー

「貴社のビジョンに深く共感し(理由)、私の経験が活かせると考え(根拠)、応募いたしました(結論)。」

このように「応募いたしました」と言い切る形で文章を締めることで、あなたの主体性や「この会社で働きたいんだ!」という強い決意が伝わりやすくなります。語尾のバリエーションを持たせることで、リズムの良い、知的な文章になりますよ。

採用担当者に好印象を与えるコツ

採用担当者は、多いときには1日に何十通、何百通もの応募メールに目を通しています。そんな彼らが無意識のうちに求めているのは、過剰なへりくだりや美しい文学的な表現よりも、ズバリ「読みやすさ(可読性)」と「情報処理のしやすさ」です。

想像してみてください。疲れている夕方に、「あ、このメール読みやすいな」と感じるものと、「うわ、なんか文字が詰まってて読む気がしないな」と感じるもの、どちらの応募者に会ってみたいと思うでしょうか?

「応募させていただきました」は文字数が12文字。「応募いたしました」は8文字です。たった4文字の差ですが、これが積み重なるとメール全体の印象が大きく変わります。「応募いたしました」は短く、件名や冒頭で「何のための連絡か」が瞬時に脳に入ってきます。

心理的な効果「流暢性」

短い言葉で要件を伝えられる人は、「仕事のコミュニケーションもスムーズそうだな」「報告・連絡・相談が的確そうだな」というポジティブな予感を相手に抱かせることができます。これを心理学的には処理の流暢性が高まると言い、好感度に直結します。

「丁寧さ」はもちろん大切ですが、ビジネスシーンにおいては「相手の処理コスト(読む時間や労力)を下げること」もまた、非常に重要な「配慮」の一つなんですよ。過剰な敬語は、実は自己満足になってしまっている場合がある、ということを頭の片隅に置いておいてくださいね。

状況別に見る言葉の選び方

ここまで「応募いたしました」を推してきましたが、では「応募させていただきました」は絶対に使ってはいけないのでしょうか? 実はそうではありません。文脈によっては、こちらのほうが適切で、美しく響くケースも確かに存在します。

言葉は生き物ですから、TPO(時と場所と場合)に合わせて使い分けるのが上級者です。以下の表で整理してみましょう。

シチュエーション 推奨される表現 理由とニュアンス
通常の公募・Web応募

(リクナビ、自社HPなど)

応募いたしました 自発的な行為であり、相手の許可を前提としないため。簡潔さが最優先される場面です。
スカウト・紹介を受けた場合

(エージェント、スカウトメール)

応募させていただきました 相手から「ぜひ応募してください」という依頼・推奨があり、それに応じる形になるため。「お言葉に甘えて応募させてもらう」という感謝のニュアンスが成立します。
社内公募・異動願い 応募いたしました

または

立候補いたしました

社内の制度を利用する権利行使なので、過度にへりくだる必要はありません。意思の強さを示すべき場面です。
日程変更・辞退 〜させていただく 「辞退させていただく」「変更させていただく」は、相手の予定を変更してもらう=相手の許容を求める文脈なので、「させていただく」が最も適切です。

特に、企業からのスカウトメールへの返信や、知人・エージェント経由での紹介など、「ぜひ応募してください」とお膳立てされた状態であれば、「(ご案内に従い)応募させていただきました」という表現は、感謝の気持ちも伝わりやすく、非常にきれいに響きます。この場合は「いたしました」だと少し事務的すぎるかもしれませんね。

応募いたしましたや応募させていただきましたの実践

理論はバッチリですね! ここからは、実際にメールを作成したり、書類を送ったりする場面を想定して、すぐに使える実践的なテクニックをご紹介します。いざ画面に向かうと手が止まってしまう…という方は、この章を参考にしてください。

履歴書を送付する際の重要ポイント

履歴書や職務経歴書をメールに添付して送る際、本文の構成は「宛名」「挨拶」「要旨(応募したこと)」「添付ファイルの案内」「結び」の順が基本です。

ここで重要なのは、ファイルを「添付させていただきました」とするか、「添付いたしました」とするか。これも応募の表現と同様、「添付いたしました」がスマートです。

「履歴書と職務経歴書を添付いたしましたので、ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。」

この一文がサラッと書けると、非常に慣れている印象を与えられます。ファイルの添付は、許可を求める必要のない事務的な作業報告ですよね。なので、「いたしました」を使うのが鉄則です。

ファイルの扱いに関する注意点

添付ファイルには必ずパスワードをかけ(最近は不要とする企業も増えましたが、指示がない限りはかけるか、Zip化せずPDFでそのまま送るのが今の主流になりつつあります)、ファイル名は「20240315_履歴書_氏名.pdf」のように、「いつ」「誰の」「何のファイルか」が一目でわかるようにしましょう。「履歴書.pdf」だけだと、採用担当者のフォルダ内で迷子になってしまいます。

失礼のない応募メールの作成法

メールを作成する際は、相手の視聴環境を想像しましょう。採用担当者は移動中にスマホでメールを見ているかもしれませんし、会議の合間にPCでチェックしているかもしれません。

「応募いたしました」と「応募させていただきました」のどちらを使うにせよ、最も失礼になり、かつ選考落ちの原因になるのは「要件が不明確なこと」です。ダラダラと長い挨拶文や、自分語りは不要です。

送信前の最終チェックリスト

  • 件名は具体的か?「応募の件」だけでなく、氏名を入れているか。
  • 宛名は正しいか?企業名は略さず「株式会社」から書いているか。担当者名が不明な場合は「採用担当者様」としているか。
  • 結論ファーストか?本文の冒頭で「貴社の求人に応募いたしました」と目的を宣言しているか。
  • 誤字脱字はないか?特に企業名の変換ミス(例:キャノン→キヤノン)は致命的です。

丁寧語の選択で悩む前に、まずはこの基本構造が整っているかを確認してくださいね。ここがしっかりしていれば、多少の言葉の揺れは許容されるものです。

件名や本文に入れる名前の注意点

意外と忘れがちなのが、件名や署名での「名前」の扱いです。件名は採用担当者が最初に目にする部分であり、メールの開封率や、後から検索して見返してもらえるかどうかに直結します。

悪い例:「応募の件」「はじめまして」

良い例:「【応募】営業職求人の件(氏名:山田太郎)」

このように、件名に氏名を含めることで、担当者は「あ、山田さんからの応募書類だな」と即座に認識でき、後から「山田さんのメールどこだっけ?」と探す際もスムーズです。これは相手への思いやり(ユーザービリティの配慮)と言えます。

そして本文の最後には必ず署名を入れましょう。署名には、氏名、住所、電話番号、メールアドレスを記載します。

また、本文中で名乗る際も注意が必要です。

×「応募させていただいております、〇〇です」

〇「〇〇 〇〇(フルネーム)と申します」

「〜させていただいている」という進行形かつ使役の表現は、自己紹介としてはかなり重たい印象になります。「〜と申します」とシンプルに名乗るのが、ビジネスパーソンとしての基本です。ここでもやはり、「簡潔=親切」の法則を思い出してください。

そのまま使える場面別の例文集

最後に、コピペして必要箇所を書き換えるだけで使える、プロ仕様のテンプレートをご紹介します。状況に合わせて使い分けてください。

【基本】Web求人を見て通常応募する場合

件名:【応募】企画営業職の件(氏名:〇〇 〇〇)

本文:

株式会社〇〇 人事部

採用担当者様

はじめまして。〇〇 〇〇(ふりがな)と申します。

貴社の求人情報を拝見し、〇〇事業の将来性と理念に強く惹かれ、応募いたしました

前職では〇〇職として〇年の経験があり、貴社の事業拡大に貢献できると考えております。

つきましては、応募書類(履歴書・職務経歴書)を添付いたしました。

ご多忙の折、大変恐縮ですが、ご査収いただけますと幸いです。

ぜひ一度、面接の機会をいただけますようお願い申し上げます。

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署名

氏名:〇〇 〇〇

住所:〒000-0000 東京都〇〇区...

電話:090-0000-0000

Email:example@email.com

【例外】スカウトメールへの返信の場合

件名:スカウトいただいた件につきまして(氏名:〇〇 〇〇)

本文:

株式会社〇〇 採用担当者様

〇〇 〇〇でございます。

先日は丁寧なスカウトのご連絡をいただき、誠にありがとうございました。

ご提示いただいた内容を拝見し、非常に魅力を感じましたため、ぜひお話を伺いたく、正式に応募させていただきました

応募書類を添付いたしますので、ご確認のほどよろしくお願い申し上げます。

(以下、署名)

応募いたしましたと応募させていただきましたの総括

ここまで、言葉の持つニュアンスから実践的なメール作成術まで解説してきました。長くなりましたが、基本のルールはシンプルです。

通常の応募であれば、「応募いたしました」を使うのが、最も無難で、論理的で、スマートな選択です。自発的な応募において、簡潔に事実を伝えることは、読み手である採用担当者の負担を減らすことにつながり、結果として「仕事ができそう」という評価にもつながります。

一方で、スカウトや紹介など、相手からのアクションに応える形であれば、「応募させていただきました」を使うことで、謙虚さや感謝の気持ちを表現できます。

大切なのは、ただ「一番丁寧な言葉」を機械的に選ぶことではなく、その時の状況や相手との関係性に合った言葉を選ぶことです。「言葉は心」と言いますが、相手への配慮があれば、多少の言葉の選び方の違いで不採用になることはありません。

さあ、これで言葉の迷いは消えたはずです。自信を持って「応募いたしました」と伝え、次のステップへと進んでいきましょう! あなたの就職活動がうまくいくことを、心から応援しています。